本読んだ

ライトではない〜十二国記のこと〜

小野不由美 著 「月の影 影の海 下」 を読んだ。 受難の日々を続け、ついに倒れる陽子の前にネズミに近い半人半獣の楽俊(らくしゅん)が現れる。 人間不信の陽子の心を少しずつ氷解し、一緒に旅する中で陽子は人間的に成長していく。 さらに陽子自身にとっ…

とにかく聞くべし〜LIFEのこと〜

鈴木謙介、長谷川裕、 Life Crew 著 「文化系トークラジオ Life のやり方」 を読んだ。 TBSラジオで隔月で一回のみ日曜の深夜の放送休止枠で放送する番組「LIFE」 社会学者の鈴木謙介をメインパーソナリティに毎回テーマを決めて、様々な人が集まり、…

戦える強さはあるか〜差別のこと〜

野中 広務、辛 淑玉 著 「差別と日本人」 を読んだ。 部落出身者であり、戦争体験者でもあった政治家、野中広務。 在日としてのアイデンティティを保ちながら、民族、フェミニズムの視点から人権を訴え続ける辛淑玉。 そんな2人が日本が抱える人権問題につ…

小ネタ集〜「のはなし」のこと〜

伊集院光 著 「のはなし にぶんのいち 犬の巻」 を読んだ。 伊集院光のメールマガジンに掲載されていたエッセーをまとめたもの。 文庫化にあたり、写真コレクションが掲載された。 はじめて伊集院光の声を聴いたのが中学三年生。 以来、ブランクはあったが今…

よかくに人の世は住みにくい〜「何者」のこと〜

朝井リョウ 著 「何者」 を読んだ。 「霧島、部活やめるってよ」でお馴染みの著者の直木賞受賞作。 就活中の学生たちの日常から現代人、特に若い世代が抱える影を描く。 フェイスブックやツイッターをコミュニケーションツールとして日常的に使う世代。 彼ら…

疑い、そして動く〜「独立国家のつくりかた」のこと〜

坂口恭平 著 「独立国家のつくりかた」 を読んだ。 3・11を経て、政治への不信感や将来への不安を感じている人は多いはず。 じゃあ自分で作ってしまおうという単純かつ大胆な発想から、 建築家、作家、芸術家と様々な分野で活躍する著者が生きる上での常…

キャラ多すぎ〜妖怪アパートのこと〜

香月 日輪 著 「妖怪アパートの幽雅な日常」を読んだ。ほっこり妖怪系の人気シリーズ。 妖怪と人間が普通にくらしているアパートに高校生の主人公が下宿することに。 アクの強いキャラクターたちと暮らしているうちに、主人公の心がほぐされていく。 子ども…

謎に迫る〜画家マグリットのこと〜

森 耕治 著 「マグリット:光と闇に隠された素顔」 を読んだ。 私が美術に興味を持つきっかけとなった画家マグリット。 それだけに思い入れも強く、遠くベルギーまで足を運んだほどだ。 紙幣の肖像になっているくらい、ベルギーでも愛されている。 マグリッ…

ダンディズムの極〜白洲次郎のこと〜

北 康利 著 「白洲次郎 占領を背負った男 下 」 を読んだ。 下巻では敗戦と占領を経て、いよいよ日本が経済的自立を目指していく。 次郎はアメリカとの交渉に臨む。 吉田茂の懐刀として活躍し、電力事業再編、通商産業省設立などにも乗り出していく。 その志…

もはやマンガ〜白洲次郎のこと〜

北 康利 著 「白洲次郎 占領を背負った男 上」 を読んだ。 美術好きには白洲正子の方がお馴染みであるが、その夫である白洲次郎の伝記。 終戦後、GHQと渡り合った男である。 上巻ではその生い立ちと終戦を迎える頃までの次郎の人生がつづられる。 ちょっ…

政治と国民の距離〜ネットと選挙のこと〜

津田大介 著 「ウェブで政治を動かす!」 を読んだ。 オバマ米大統領が選挙の際にネット上の活動で多くの支持を得たわけだが、 日本においては、公職選挙法によってネット上の選挙活動は禁じられている。 ネットインフラは世界トップクラスなのに、である。 …

悲喜劇てんこもり〜「犯罪」のこと〜

フェルデナント・フォン・シーラッハ 著 酒寄進一 訳 「犯罪」 を読んだ。 ドイツからヨーロッパ、そして世界中で翻訳されベストセラーとなった短編ミステリー。 弁護士である私が遭遇した11の事件。 実際に起こった事件を元にしているのだが、いずれも人…

小さな一歩とすり合わせ〜社会活動のこと〜

湯浅 誠 著 「ヒーローを待っていても世界は変わらない」 を読んだ。年越し派遣村の村長を務めたり、政府の雇用対策などで参与として活躍したと、 主に貧困問題に対して活動している著者が、その実践的思想から民主主義を考える。 震災復興、年金や雇用の金…

人生のひだ〜イーユン・リーのこと〜

イーユン・リー著 「黄金の少年、エメラルドの少女」 を読んだ。アメリカで活躍している中国人女流作家。 短編の名手として知られていて、数々の文学賞を受賞している。 噂を聞いて読んでみた。 本作も短編集だが、いずれも現代中国が舞台になっている。 そ…

謎の総合商社〜「東照宮の怨」のこと〜

高田崇史 著 「QED 東照宮の怨」歴史の謎と殺人事件の謎をリンクさせるミステリーシリーズ。 タイトルどおり、舞台は東照宮。そして三十六歌仙だ。 探偵役の主人公は歴史に関する知識を駆使して謎に迫る、アームチェアディテクティブタイプ。 が、いくらなん…

学び語れ〜日本の問題のこと〜

池上 彰 著 「日本(にっぽん)の選択−あなたはどちらを選びますか? 先送りできない日本 2」 を読んだ。 昨年末の選挙直前に出た作品。 選挙特番でも話題になった著者が、例によってわかりやすく日本がかかえる問題点を挙げている。 消費税、領土、エネル…

夢と仕事〜「下町ロケット」のこと〜

池井戸潤 著 「下町ロケット」 を読んだ。 大田区の中小企業である佃製作所は独自の技術力を活かした経営をしている。 だが突然、大手取引先を失い、さらにライバル企業から狡猾な特許侵害の訴訟を起こされる。 銀行からも見放され、あとが無くなるが、、、…

性と生〜「ふがいない僕は空を見た」のこと〜

窪 美澄 著 「ふがいない僕は空を見た」 を読んだ。 R-18文学賞大賞、山本周五郎賞W受賞作。 田畑智子が体を張った映画が話題になっている。 コスプレ好きな主婦と高校生の関係を中心にした群像劇。 非常に評価が難しい作品だと思う。 高校生の主人公、コス…

問題がヒマラヤ級〜日本のこと〜

池上彰 著 「先送りできない日本”第二の焼け跡からの再出発”」 を読んだ。 池上彰がこれだけ活躍しているのに、テレビでもほとんど見たことなかったし、著書も未読だった。 100円だったので読んでみたが、なるほどわかりやすい。 震災直後に出た本だが、…

センスに脱帽〜「永遠の出口」のこと〜

森絵都 著 「永遠の出口」 を読んだ。 主人公の紀子はいたって普通の少女だ。 彼女の小三から高三までの人生をエッセーのような形で紡いでいく。 過去と四つになって組むような重さもない、未来へのステップのような気負いもない。 ちょっと振り向いてみたよ…

その背景に何が〜ルネサンスのこと〜

池上 英洋 著「ルネサンス 歴史と芸術の物語」を読んだ。 美術に興味が無い人でも”ルネサンス”という言葉は知っているだろう。 15世紀くらいからイタリアから広まった芸術文化革命で、古代復興を目指したものだ。 ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエ…

責任が必要〜死というテーマのこと〜

重松清 著 「その日の前に」 を読んだ。流星ワゴンなどでお馴染みの著者の泣ける本として名高い作品。 死をテーマにした物語の短編集。 表題作は余命を宣告された妻との日々を描いたもので、その妻が死ぬ「その日」、 死んだあとの「その日のあとに」と連作…

ウィット〜「詩人のナプキン」のこと〜

堀口大学 訳 「詩人のナプキン」 を読んだ。訳詩で有名な堀口大学の翻訳フランス短編集。 アポリネールやメーテルリンクなどの様々な作品が収録されているが、 詩的だと思ったら、恐ろしくグロテスクだったり、幻想的と思えば現実的だったり。 中でもアポリ…

人ってこんなん〜「夢見通りの人々」のこと〜

宮本 輝 著 「夢見通りの人々」 を読んだ。 タイトルから想像すると、商店街の人々のほっこりするような心の交流を描いているのかと思うが、全く違う。 人間を人間たらしめる弱さやエゴといった醜い部分を、過大にも過小にもせず、ごく自然に描いている。 オ…

拒絶反応〜「溺レル」のこと〜

川上弘美 著 「溺レル」 を読んだ。 女性に人気のある作家で、「センセイの鞄」などは映像化もされて、私も昔見ていい作品だと思った。 で、何の予備知識もなく読んではみたのだが。 合わない。。。 良いとか悪いとかではなく、とにかく合わない。 文章も間…

キリキリしたかった〜「臨場」のこと〜

横山秀夫 著 「臨場」 を読んだ。 修身検視官の異名をもつ倉石の活躍を中心とした短編集。 ドラマ、映画化もされている。 警察組織の実状を描くことに定評がある著者だが、 この作品では倉石というヒーローの存在ありきの内容になっている。 この主人公のお…

カリスマ続出〜シモンと70年代のこと〜

四谷シモン 著 「人形作家」 を読んだ。 私が人形の世界に興味をもつきっかけとなった四谷シモンの自叙伝。 人形作家としてお馴染みの四谷シモンではあるが、そこに至る過程は波乱万丈だ。 自由奔放な母親の元で育ち、ロカビリーを歌ってみたり、唐十郎の状…

伝える力〜山本美香さんのこと〜

山本美香 著 「世の中への扉 戦争を取材する―子どもたちは何を体験したのか」 を読んだ。 今も内戦が収まらないシリア。 その取材中に銃撃戦にまきこまれ死亡したジャーナリスト山本美香さんが、 10代に向けて書いた作品。 戦争とはどういうものなのか、ど…

程度が難しい〜女刑事のこと〜

誉田哲也 著 「ストロベリーナイト」を読んだ。昨年あたりに竹内結子主演でドラマ、映画化された女刑事小説。 ちなみに映像作品はまったく見ていない。惨殺を死体の発見から「ストロベリーナイト」と呼ばれるイベントの存在が浮かび上がる。 直感と行動力で…

リアル忍者〜忍者のこと〜

和田竜 著 「忍びの国」 を読んだ。ようやく「のぼうの城」の公開が解禁された和田竜の2作目の長編。 天正伊賀の乱といわれる。織田軍と伊賀者との戦いが今回の舞台になっている。 乱世の中で主君と共に生きようとする武者たちと、 とにかく金のためなら仲…