人ってこんなん〜「夢見通りの人々」のこと〜

宮本 輝 著 「夢見通りの人々」 を読んだ。


タイトルから想像すると、商店街の人々のほっこりするような心の交流を描いているのかと思うが、全く違う。
人間を人間たらしめる弱さやエゴといった醜い部分を、過大にも過小にもせず、ごく自然に描いている。


オムニバス形式で、夢見通りにいる様々な人物が登場するのだが、
それぞれに願望があって、それは純粋な願望であるのだが、同時に醜悪な人間臭さも持っている。
そういった一見矛盾するような葛藤の種は私やあなたにもあるわけで、それが人であり、それを描くの小説家であると思う。


著者の目は厳しく冷静だ。
人間臭さを少しも脱臭しない。
人の業というものを否応なく考えさせられる。


そういものだよ。甘くないんんだよ。
でも、そんなもんじゃない。


仕方ないや、と。
どうせ明日は来る、と。
諦念ほどではない、苦笑してしまうような読後感はなかなか悪くない。


連作短編集として素晴らしい構成になっている。
ちょっと最近では見られないタイプの作品。お勧め。


夢見通りの人々 (新潮文庫)

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