伝える力〜山本美香さんのこと〜

山本美香 著 「世の中への扉 戦争を取材する―子どもたちは何を体験したのか」 を読んだ。


今も内戦が収まらないシリア。
その取材中に銃撃戦にまきこまれ死亡したジャーナリスト山本美香さんが、
10代に向けて書いた作品。


戦争とはどういうものなのか、どんな悲劇が子供や女性たちを襲っているのか。
ジャーナリストとして、一人の女性として、人間として、
戦争を起こしてはいけないというメッセージが込められている。


自分の無力さをわきまえた上で、それでも現地へと足を運ばずにはいられない。
今起きていることを伝えたいという純粋さと強さが伝わってくる。


難しい思想や、ややこしい宗教、面倒な政治。そういうものを抜きにして、
簡単に人の命を奪う戦争がいかにバカげたことか。
それを何度も繰り返す。
ああ、またか、と。


山本さんはそのまたかで人生を狂わされた人たちを自分の目で見て、伝え続けた。
その声に耳を貸さないというのは、どうなんだろう。
命を懸けて伝えてくれたのだから、その声を聴かなくては。応えなくては。


メディアは山本さんの死そのものを取り上げてばかりだった。
山本さんが伝えたかったのは、戦争地帯で悲鳴を上げている普通の人たち。
ジャーナリズムを担う同士だったら、もっと現地の普通の人の叫びを伝えるべきだと思う。


私たちは知る力をひとつ失った。
これは大きな損失だということをもっと多くの人に感じてほしい。

世の中への扉 戦争を取材する─子どもたちは何を体験したのか

世の中への扉 戦争を取材する─子どもたちは何を体験したのか