悲喜劇てんこもり〜「犯罪」のこと〜

フェルデナント・フォン・シーラッハ 著 酒寄進一 訳
「犯罪」 を読んだ。


ドイツからヨーロッパ、そして世界中で翻訳されベストセラーとなった短編ミステリー。
弁護士である私が遭遇した11の事件。
実際に起こった事件を元にしているのだが、いずれも人間の業から生まれる悲喜劇をあざやかに描いている。
淡々と事実を綴っているような文体によって、あくまで創作物である事件に真実味が生まれ、
読者をぐっと引き込む。


最も印象深かったのは「棘」という話。
博物館の警備員がずっと同じ部屋で「棘の刺さった少年」という作品を長年観ているうちに、
その棘が気になりはじめ精神的に追い詰められていく。
そして彼のとった行動は。。。


どの話も秀逸で、余韻を楽しめた。
それでいて読みやすい。
おすすめの一冊である。

犯罪

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