センスに脱帽〜「永遠の出口」のこと〜

森絵都 著 「永遠の出口」 を読んだ。


主人公の紀子はいたって普通の少女だ。
彼女の小三から高三までの人生をエッセーのような形で紡いでいく。
過去と四つになって組むような重さもない、未来へのステップのような気負いもない。
ちょっと振り向いてみたような感覚。


すごく良い作品だと思った。


子どもの頃、体の成長は自覚できても心の成長は自覚できるものではなかった。
毎日の小さな出来事や出会いや会話が少しずつ成長させてくれたのだと、今はそう思える。
ただもう毎日を何の疑いも無く過ごしていた頃が懐かしい。


このちょっと振り向いたくらいの感覚って意外と難しいと思う。
ノスタルジーではない、頭をよぎっては少し笑って、少し前向きなれる感じ。
そういう出来事はこれからも起きるし、今まさに起きているんだということ。
ああ、なんだかんだで生きてるなという、さらりとした感覚だ。


森絵都はいわゆる心のひだっていうものをよく見ている作家だと思う。
なんというかセンスを感じて仕方ない。
いい! 非常にお勧め。
正月休みに帰省先などで読むにはぴったりではないだろうか。

永遠の出口 (集英社文庫(日本))

永遠の出口 (集英社文庫(日本))