2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

極限状態の愛憎劇〜東京島のこと〜

桐野夏生 著 「東京島」 を読んだ。映画化でも話題になった実話をもとにした作品だ。 32人が流れ着いた無人島。その中で女は主人公である40代の清子だけ。 極限のサバイバル状態の中で狂気と理性の間を彷徨いながら生きていく様を描いている。 突然何人…

ご対面〜Tの遺伝子を継ぐ者〜

先月産まれたばかりのTの長男M君が、奥さんの実家から帰ってきた。 さっそく見に来いというので行ってきた。 奥さんのEさんと会うのも結婚式以来だったが、産後の疲れも癒えて元気そうである。 食事の用意までしてもらった。 こうしてTの連れに食事を用…

もうひとつの政倫審〜三人の忘年会のこと〜

Tさん、U君と男だけの忘年会を我が家で行った。 Tさんからの突然の結婚報告の電話をauショップ内で受け、絶叫し、 「お客様大丈夫ですか」と心配されたのはこの数日前。 一体何が起こったのか。もはや忘年会ではない。 ちょいとした政治倫理審査会である…

絶妙さじ加減〜「袋小路の男」のこと〜

絲山 秋子 著 「袋小路の男」 を読んだ。 現代の純愛小説と賞賛された表題作を含んだ短編集。 素直に上手いと思った。 何が上手いって”加減”である。 恋愛小説というのは恐らく作品と読者が共鳴できるジャンルだと思うのだが、 そのためには微妙なさじ加減が…

お前かい!〜森見登美彦のこと〜

森見登美彦 著 「太陽の塔」 を読んだ。京都を舞台に、振られた彼女を研究と称してストーキングまがいに追いかけている主人公。 そして、その周りにいる個性的な友人達。 打倒クリスマスを目標にする彼らの青春の日々をつづった作品だ。 30ページくらいで…

メガネとアート〜現代美術館のこと〜

「オランダのアート&デザイン 新・言語」 を見た。 現代美術館で開催中の企画展。 時代背景を根元的に見据えたデザイン性で突出したオランダのアーティストを紹介している。 ひとことで言うと自由。無責任な自由でもないし、反体制的な自由でもない。 もっ…

時代と勝負〜「ドーン」のこと

平野啓一郎 著 「ドーン」 を読んだ。骨太な小説が読みたいと思い、選んだのが平野啓一郎。 「日蝕」でデビューし三島の再来と言われたが、難解すぎる文章で、「気取っていやがる」と忌避していた。 最近、伝えることに目覚めたらしく、評価も高まっているの…

最高傑作〜演劇「春琴」のこと〜

演劇 「春琴」 を観に行った。 深津絵里主演、サイモン・バクバーニー演出。 去年も観に行った時にすこぶる感動し、今回再演ということで迷わず観に行った。 深津絵里といえば、モントリオール映画祭で最優秀女優賞を獲得し、今最も乗っている女優と言えるだ…

危険な純度〜宮沢賢治のこと〜

宮沢賢治 著 「注文の多い料理店」 を読んだ。 生前に発表された唯一の童話集。 私は一種、賢治アレルギーというものがある。 苦手なのだ。単純に苦手なのである。 なんだろう、あの純粋さにやられてしまう。 私から見ると、あの純粋さは暴力に近いのだ。 生…