人生のひだ〜イーユン・リーのこと〜

イーユン・リー著 「黄金の少年、エメラルドの少女」 を読んだ。

アメリカで活躍している中国人女流作家。
短編の名手として知られていて、数々の文学賞を受賞している。
噂を聞いて読んでみた。


本作も短編集だが、いずれも現代中国が舞台になっている。
そこに描かれているのは孤独。それは静かな孤独だ。
冷たいタイルを触ってしまったような、なんても言えない世界が広がっていた。


急激な経済成長のひずみやゆがみの中で淡々と孤独を見据えている登場人物たち。
そこに救いや再生の道はあまり描かれてはいないのだが、
人間らしさというものがしっかりと表現されている。


その人間らしさというのは、能動的なものではなく受動的な部分。
大きな流れ、つまり運命というものにそっと流されていく感じ。
伝えにくいのだが、その伝えにくい人生のひだを見事に描いているのだ。


こういった丁寧な小説は最近の日本文学では見ない。
文学だけではなく、美術の面でもアイ・ウェイウェイの作品に驚いた記憶も新しい。
経済だけでなく、文化芸術の面でも日本は引き離されているのかもしれない。


そんなナショナリズムはさておき、他の作品も是非読んでみようと思った。

黄金の少年、エメラルドの少女

黄金の少年、エメラルドの少女