小さな一歩とすり合わせ〜社会活動のこと〜

湯浅 誠 著 「ヒーローを待っていても世界は変わらない」 を読んだ。

年越し派遣村の村長を務めたり、政府の雇用対策などで参与として活躍したと、
主に貧困問題に対して活動している著者が、その実践的思想から民主主義を考える。


震災復興、年金や雇用の金融問題、近隣諸国との関係、様々な問題を抱える現代日本に生きる私たちの中にある、
ヒーロー待望論。
圧倒的カリスマが現れてすべて解決してくれないか。
既得権益に固持しようとする奴らは悪い。
とにかく、早く決めてくれ。


著者はそういった安易な流れに警鐘を鳴らしている。
まさに、”流れ”という責任を転嫁して身を委ねてしまうことの危険さに触れる。


目の前にあるものをしっかり認識し、そこに関わる人たちの要求を調整していく。
この調整するということの重要さを特に書いている。
世の中は単純な二元論では語れず、多くの思想と要求があり、そこをうまく調整すること。
その地道な作業から逃げてはいけないということ。


突然、大きな変化は望めないのだから、身の回りの小さなことからしっかり対応することの必要性。
面倒臭いこともあるが、社会の連鎖というものを意識すれば、その必要性も見えてくる。
とにかく言葉に説得力がある。


自分は無力だと思う人は多い。私もしょっちゅうそう思う。
その意識の先には劇的なものを見ている場合が多いのではないか。
身の程を知れというと厳しいが、無力なら無力なりにその小さな力を何かに使うべき。


大きな問題の影に隠れた小さな(当事者には大きな)問題がいくつもあることを知らなくてはいけないのだろう。
社会という大きな生き物を私はまだ捉えられていない気がする。
何か胸の奥をぐらぐら揺さぶられる本だった。
言葉も平易なので読みやすい。必読である。

ヒーローを待っていても世界は変わらない

ヒーローを待っていても世界は変わらない