絶妙さじ加減〜「袋小路の男」のこと〜

絲山 秋子 著 「袋小路の男」 を読んだ。


現代の純愛小説と賞賛された表題作を含んだ短編集。
素直に上手いと思った。
何が上手いって”加減”である。


恋愛小説というのは恐らく作品と読者が共鳴できるジャンルだと思うのだが、
そのためには微妙なさじ加減が必要となる。
登場人物たちの心の強さの加減である。それが抜群に上手いと感じた。


12年間指一本触れあわない男女の話なのだが、
簡単に言うと、馬鹿な女と身勝手な男の話なのだ。
だが、その背後にある他人に踏み込めない、或いは踏み込ませない、孤独というか弱さというか。
それでいて一人ではいられない感じ。
その現代的な人間臭さがよく描かれていた。


読めば、こういう奴いるなーと誰もが思うだろうし、
やがて自分の中にある何かが共鳴してしまうと思う。
なかなか言葉ではな表せない、
まさにフィーリングを感じる作品。


他の作品もいずれ読んでみたいと思う。

袋小路の男 (講談社文庫)

袋小路の男 (講談社文庫)