極限状態の愛憎劇〜東京島のこと〜

桐野夏生 著 「東京島」 を読んだ。

映画化でも話題になった実話をもとにした作品だ。
32人が流れ着いた無人島。その中で女は主人公である40代の清子だけ。
極限のサバイバル状態の中で狂気と理性の間を彷徨いながら生きていく様を描いている。


突然何人もの若い男に求められ変貌する清子のえぐい部分がリアルに描かれているのは、
桐野夏生ならではだろう。あとは乃南アサくらいか、いずれも女流作家ならではだ。


設定自体がそもそも面白いし、前半部分はかなり面白かった。
が、後半は蛇足的に感じてしまった。著者自身はきっともっと短くしたかったのではないだろうか。


先にも書いたがこのストーリーにはモデルになった実話がある。
少し前に買った別冊歴史読本「世界魔性のヒロイン」にもその記事がある。


太平洋戦争中に孤島アナタハンに比嘉和子という女性一人と32人の兵隊が置き去りになった。
敗戦したことを知らずに6年間ジャングルで暮らしていたのである。
そしてその間彼女をめぐる壮絶な戦いがあり、12人が殺されたり、謎の死をとげた。


救出されたのちこのニュースはセンセーショナルに報道され、
アナタハンの女王蜂」と呼ばれたそうである。
本人主演でこの事実を映画化したりしたが、その後の人生はあまり幸せでなかったようだ。


自分だったらどうするか、、、そんなことを考えながら読むと楽しめる一冊である。

東京島 (新潮文庫)

東京島 (新潮文庫)