受難〜「十二国記」のこと〜

小野不由美 著 「十二国記 月の影 影の海 上」 を読んだ。


”学生時代、クラスで目立たない女子が休み時間に読んでいる本”として、
私の中でお馴染みの作品。
ラノベの草分け的作品としても知られているが、未読であった。
新潮社から新装版として出版されたので、この機会に読んでみることにした。


普通に学生生活を送っていた陽子の前に、自分を迎えにきたという妙な風体の男が突然現れる。
そしてそのまま異世界へと連れていかれ、陽子の冒険が始まる。
いかにもファンタジックなストーリーが展開されそうではあるが、
読んでみて驚く。


過酷。。。
異世界に独り放り出されることになる陽子に降りかかる災難がえげつない。
襲い掛かる獣、捕えようと、あるいは騙そうする人間、精神的に追い詰めてくる幻影。。。
とにかく受難っぷりがすごい。
著者はサディスティックなまでに主人公を追い詰めていく、陽子は否応なく生きることを問い直していくことになる。


なるほど面白い。これは止まらない。
アニメ化にもなり、いまだ支持されることはある。
下巻が早く読みたい。。。

月の影  影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

月の影 影の海 (上) 十二国記 1 (新潮文庫)

干物最高〜お墓詣りのこと〜

母とお墓詣りに行って来た。


千葉の鴨川にある祖父母のお墓へ。
天気も良く、ドライブ気分で車を走らせる。
サービスエリアでロッテリアに寄ることを忘れてはいけない。
母はロッテリアエビバーガーをこよなく愛しているのだ。


お墓詣りをすると気分がスッキリする。
雑草を取り除き、墓石を洗い、花を飾る。
手を合わせ、いろいろと報告する。


時々、面白くなるときがある。
無機質な石を前に祈るって不思議だ。
ただ、こうして思いをかければ、やはりそれは特別な石になるのかもしれない。


お墓をあとにして、車を飛ばしてお楽しみの場所へ。
そう、白浜干物センターだ。
センターといいながら、小さい店。
ただ味がとても良くて、リピーターになっている。
私は干物が大好きなのだ。
おばちゃんと話ながら、かごにどんどん干物を入れる。
おまけにワカメももらい、大満足。冷凍庫に入るか不安な量。


道中、母とぺちゃくちゃ話すのもお墓詣りに目的のひとつ。
家族を感じる一日というわけだ。

小ネタ集〜「のはなし」のこと〜

伊集院光 著 「のはなし にぶんのいち 犬の巻」 を読んだ。


伊集院光メールマガジンに掲載されていたエッセーをまとめたもの。
文庫化にあたり、写真コレクションが掲載された。


はじめて伊集院光の声を聴いたのが中学三年生。
以来、ブランクはあったが今でもラジオは聞いている。
伝えるということをまじめに取り組んでいる人が書いたものは、やっぱり上手い。


それぞれの話は見開き程度と短いが、すごく練られていて面白い。
いい人、悪い人、という価値基準は関係なく、人らしい良心を感じられるタレントの一人だと思うのだが、
ラジオを聞いていない人にはどう思うかはわからない。
ラジオを聞いていない人が手に取るのかどうかもわからないが。。。


フリートークのネタ帳を見ているような気分にもなれる。
写真もラジオでは聞いていたが、実際見てみて、本当にバカらしいが、面白かった。
オモシロを見つけるアンテナは大事にしたいと思った。


のはなし にぶんのいち~イヌの巻~ (宝島社文庫 C い 6-1)

のはなし にぶんのいち~イヌの巻~ (宝島社文庫 C い 6-1)

よかくに人の世は住みにくい〜「何者」のこと〜

朝井リョウ 著 「何者」 を読んだ。


「霧島、部活やめるってよ」でお馴染みの著者の直木賞受賞作。
就活中の学生たちの日常から現代人、特に若い世代が抱える影を描く。


フェイスブックツイッターをコミュニケーションツールとして日常的に使う世代。
彼らは他者を見続け、他者から見続けられている。
それは自分が常に何者かであることを要求されるということに他ならない。


他者に対する目を意識するということ、また他者を見るということ。
それは時に残酷なまでに恥ずかしく、痛ましく、悲しい。
それが可視化されてしまったのだから、これは大変なことだ。


より若い世代はそんなこと意識せず、自分を使い分けたりするのだろうが、
それでも、アイデンティティが揺らぐきっかけが増えたことは間違いない。
今の若者の日常なのだろうが、私にはすごく新鮮だった。
そして、この著者の感性の新しさに驚いた。


良い本かどうかは分からないが、面白いことは間違いない。
ひとつ文学の流れが変わった気さえした。


それにしても、私の世代はSNSを利用する人、しない人が分かれる世代だと思う。
私は使わない派だ。そんなにつながっていたくない。。。
今、中学生くらいでSNSを使わざるをえない状況を考えるとぞっとする。


なにか人格形成の成り立ちも変わっていく気がする。
やりにくい世の中である。
話しは逸れたが、お勧めだ。

人間キャパ〜タローとキャパのこと〜

ロバート・キャパゲルダ・タロー 2人の写真家」を見に行った。


祝日。午前中に仕事を終え、天気も良かったので横浜美術館までバイクで向かった。
写真に興味なくても名前くらいは聞いたことがあるだろうロバート・キャパ


ロバート・キャパというのはいわば、アンドレフリードマンゲルダ・タローのユニット名。
アメリカの報道カメラマンのキャパとして2人は作品を送り出していたのだ。
パートナーのタロー自身もカメラを持って戦場へ向かった。
今回は彼女の作品もまとめて展示してある。


最も有名な「崩れ落ちる兵士」の兵士が崩れ落ちる前の写真を撮っていたり、
ローアングルという特徴やいわゆるキャパとの違いを楽しめた。
タローは残念ながら26歳という若さで戦地で死んでいる。


ファシストという熱い思いの2人はどんな思いでファインダーを覗いていたのだろう。
恋人同士である2人はお互いをどんなふうに見ていたのか、
タローを失ったキャパは悲しみはどれほどだったか。


かつてないほどに、キャパというものの人間性を感じることができる素晴らしい企画展だった。

疑い、そして動く〜「独立国家のつくりかた」のこと〜

坂口恭平 著 「独立国家のつくりかた」 を読んだ。


3・11を経て、政治への不信感や将来への不安を感じている人は多いはず。
じゃあ自分で作ってしまおうという単純かつ大胆な発想から、
建築家、作家、芸術家と様々な分野で活躍する著者が生きる上での常識に挑む。


土地所有の価値にいきなり疑問を投げかける。
なぜ土地にしばられるのか、なぜあんなに高いのか。
ホームレスの生活を調査し、ゼロ円でも生きていける発想を研究していく。
少し視線を変えてみるだけで、生活の常識は大きく変わる。


彼の論理は突飛だし、だれもができるものではない。
目の前にある常識を疑い、そして壊そうとしていくエネルギーを感じるだけでも価値がある本だと思う。
震災から2年過ぎ、自民党に代わり、いつの間にか元の感覚に戻りつつあるし、戻ることが最善という風潮がある。
それではだめで、変化を認識し、変化に対応していくことが必要になっていく。


自分自身もつい保守的な、安心を求めて選択していくことが多い気がする。
疑うこと、変わることを恐れずにいきたいと思った。
様々な選択しがあることを想像していくこと、生きるセンスとはそういうことなのかもしれない。

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)

独立国家のつくりかた (講談社現代新書)

写真いろいろ〜写美のこと〜

写真美術館に行った。

「夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史 北海道・東北編」
タイトルどおり日本における写真の普及を辿るシリーズ。


新撰組土方歳三の肖像写真などが展示されている。
また、明治の三陸地震など天災の記録写真も公開されている。
幕末にやってきた写真。昔の景色や人々の様子を写真で見るのは単純に面白い。


アーウィン・ブルーメンフェルド 美の秘密」
ヴォーグなどで第一次、二次世界大戦の時代に活躍したアメリカの写真家の個展。
これが戦後直後のファッション誌の写真なのかと思えない、とにかく驚いた。
特にカラー復元されたものなど、今のそれと言われても疑わないほど洗練されている。
少し前に見たエドワード・スタイケンもそうだが、ファッション写真というのはものすごい勢いで動いているようだ。
古典を踏襲したり、壊したり、新しく作ったり、読者の目を意識するからこそなのかもしれない。


「APAアワード2013」
日本の広告写真の公募展。
今回の大賞はラフォーレの広告。ユニクロトヨタドラえもんシリーズなども受賞。
普段なにげなく消費している広告写真だが、じっくり鑑賞していみるといろんな発見がある。
考え抜かれて生み出されているわけだが、写真家の色も出ているものなのだ。


3展示すべて見たが、様々な視点から写真に触れることができた。
面白い。この一言に尽きる。