最高だってよ〜「桐島、部活やめるってよ」のこと〜

映画 「桐島、部活やめるってよ」 を観た。


学校という閉鎖的な社会におけるヒエラルキー
その頂点にいた桐島が部活を辞めるということに、振り回されてる生徒たちを描いた、青春群像劇。
結論からいうと、この映画は傑作だ。ここ最近では群を抜いて面白い。


書きたいことがたくさんあるが、まず素晴らしいのはキャスティングと役者たちの演技。
実質的な主人公である宏樹の心の中にある虚無感をたたえた目。
その宏樹と付き合うことにステータスを感じている沙奈(私の中ではこの子が助演女優賞
その沙奈も仲間になっている中心的な女子グループ四人組の、とりあえず仲良くしている感じなんかは見ていてヒヤヒヤするくらいだ。


「できる奴は何でもできるし、できない奴は何にもできないってだけの話だろ」
そう言う宏樹は自分の中にある渇きをどこかで感じている。
一方で失恋やヒエラルキーの中の下層部にいることを意識している傷ついた者は部活によって救われていく。
つまり好きな何かがあるということ、拠り所があるという強さだ。


「それでも俺たちはこの世界で生きていかなければならないのだから」
劇中劇のセリフなのだが、その学校というどうしようもなく閉鎖的な世界で生きるということの息苦しさ。
その中で自分の世界をもつことの重要性。
アイデンティティーをどこに見出すか。
問題は勝ち負けではないのである。


この映画で描かれている学校という世界は、そのまま社会のあり方である。世界の縮図と言ってもいい。
価値観を共有できず、ささいなことで振り回されることは、学校の生徒同士も国同士という単位でも同じこと。
滑稽であり、深刻でもある。


誰かと話したくなる映画。それは名作の条件。
その条件を完璧に満たしている。シナリオ、演技、映像、全部いい。
ややこしいこと抜きに、エンタテインメントとしても単純に面白い。
見た後、ヒリヒリすること間違いなし。とにかくお勧めだ。