生活の中に〜向田ドラマのこと〜

向田邦子 著 「せい子・宙太郎 下」 を読んだ。


向田作品の登場人物は普通の人たちだ。
普通の未完成な人たち。
それなのに、昔会ったことがあるような懐かしい存在感があるから不思議だ。


奇抜で個性的な人たちが活躍する昨今のドラマがまるで陳腐に見えてくる。
今、この時代に向田さんがいたら……、と思わずにはいられない。


さりげないセリフのやりとりの中に、誰の中にもある見栄や嫉妬、弱さ、見えにくい優しさ。
そういうものをさらりと垣間見せてくれる。
涙を強制するようなものでなく、生活の中にさらっと出てくる感じ。


最高。もう最高。
やはり全集を買おうかと悩むところである。