知る義務〜震災の現実〜

石井光太 著 「遺体―震災、津波の果てに」を読んだ。


3・11の大震災。
岩手県の釜石では1100人を超える死者・行方不明者が出る被害にあった。
マチと言われる沿岸に近いエリアは完全に津波に飲みこまれてしまった。


私たちはニュースで死者の数に驚いているが、その現場にはその数の遺体と対峙しなくていけない現実があった。
安置所を管理する民生委員、遺体を探索、運搬する自衛隊や市の職員、検死、歯型確認をする医師たち、火葬に向け奔走する葬儀会社の社員。
様々な人たちが、様々な遺体と向かい合った。
現地で共に行動して取材した、壮絶なルポタージュ。


どこかで私は震災関連のニュースを避けていた。
想像をはるかに超えた出来事に目をつむりたいという、単なる弱さからだ。
単純につらいのである。


一方で知る努力をしなくてはいけないという気持ちも強くあった。
時間が過ぎようやくこの本を手に取ったわけだが、
覚悟はしていたが、それでもその壮絶な内容に少し参った。


凄惨な描写をつづるような内容では決してない。
当たり前のように生活していた人たちが突然、とんでもない数の遺体を目の前にすることになり、
パニックになりながらも、きちんと弔いたいという気持ちが生まれていく。
その人間の強さに参った。


とにかく多くの人に読んでほしい。
ルポタージュとして純粋に素晴らしいし、読む義務があるようにも思える。


もちろん軽く読める内容ではないので、
自分の中に人の痛みを受け入れる余裕があるときに読むといいだろう。
震災の被害にあった方たちの荷が軽くなるわけではないけれど、
それでも知る必要があるように思う。


遺体―震災、津波の果てに

遺体―震災、津波の果てに