その先に希望はあるか〜「ジェノサイド」のこと〜

高野和明 著 「ジェノサイド」 を読んだ。

本屋大賞やこのミスなどで評判になっている作品。
世界の脅威となる存在の出現。
大国に踊らされる者、息子の命を守ろうとする者、難病に苦しむ子供たちのために戦う者、ただ権力を行使しようとする者。
日本、アメリカ、コンゴ、世界を舞台に同時進行していくそれぞれの物語。


世界の脅威となる存在、新しいウィルスや化学兵器、果てはエイリアンまでいろいろなパターンが想定できるが、
この作品のパターンはなかなか想像しなかった。
そしてその存在から派生する可能性をうまく物語の乗せている。
なるほど面白かった。
ここまで売れると映像化という話になりそうだが、このスケールはなかなか映像化できないだろう。
日本で映像化は絶対やめた方がいいとだけは断言できる。


歴史認識の部分で少し気になる部分はあったが、読み物としては十分楽しめる。
化学の専門用語がやたら出てくるのに少し閉口するが、そこも話の流れの良さで乗り越えられるだろう。


話しは少し変わる。
ジェノサイドというと頭の中に浮かぶ悲惨な過去の事実がある。
ナチスによるホロコーストルワンダのフツとツチの戦い、ユーゴスラビア紛争、パレスチナ難民虐殺…。
どうして歴史を学ばないのか、なぜこんなことになるのか。
事実を知るたびに吐き気がする。
そしてつい先日にもシリアで大虐殺が行われたことが発覚した。


私はそもそも人間は正常な生き物ではないと思っている。
不完全であるという認識無くして、人は正常に近い状態にはなれない。
この作品でも戦争と死について語られているが、より興味深いのが人類の進化について、だ。


私たちがまだもし進化するのだとしたら。
より高次の思考ができるのだとしたら、そのときこそ繰り返される悲惨な歴史を止めてほしい。
現代の人間の思考レベルでは、たぶん繰り返し続けるだろうから。


ジェノサイド

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