下町の匂い〜「かたみ歌」のこと〜

朱川 湊人 著 「かたみ歌」 を読んだ。


昭和40年代前後、下町にあるアカシア商店街を舞台に様々な人間模様を描いた短編集。
少し不思議な、少しホラーなテイストになっている。


直木賞を受賞した「花まんま」も昭和30〜40年代の大阪が舞台だった。
この作家さんは特に子供の目線で見た世界というものを実によくとらえる。
厳密にいうと、子供の目で見た世界を思い出す大人の目、でもあるのだが。


懐かしい気持ちになる物語だが、おしつけがましい懐古主義になっていないところがいい。
下町の埃っぽい感じがとても心地よかった。


この物語がなじみやすいのも当然なのだ。
このアカシア商店街、どうやら三ノ輪橋商店街がモデルになっている。
都電が走り、アーケードのある商店街といえばここなのだ。
今でも相当な昭和臭の残る三ノ輪。
多少さびれてはきたが、それでも独特のにぎわいをみせている。


この本を読んで、三ノ輪散策に洒落込むのも良いかもしれない。

かたみ歌 (新潮文庫)

かたみ歌 (新潮文庫)