言葉を友人にもとう〜名言のこと〜

寺山修司 著 「ポケットに名言を」 を読んだ。


寺山修司古今東西の小説や映画、歌の歌詞、演劇のセリフから選んだ名言が厳選されている。
彼にとって最初の名言は井伏鱒二
花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生さ
だそうだ。
人生のはかなさを鼻歌のように感じさせるこの言葉を選ぶあたり、なるほど寺山修司といった感じがする。


紹介されている名言は前後の文章から切り取られた状態なので、文脈から意味を読み取ることができない。
レトリック集と言ってもよいかもしれない。


それにしても、名言というものは大変な力をもつことがある。
強い意味とインパクトをもつ言葉は、人の選択に影響を与え人生を変えてしまうことだってある。
つまりは呪いだ。


私にとって最初の名言はパスカル
力無き正義は無力 正義無き力は暴力という言葉だ。度々頭に浮かぶ言葉である。


小説などでいうと、やはり鬼平
右か左かどっちにするか迷った時は、オレは早く死ぬ方を選ぶ事にしている
人が道を逸れるにはそれなりに理由があるものさ
とても深い言葉だ。

映画・椿三十郎から
本当に切れる刀は鞘に入っているものよ
これも印象深い名言だ。


人はそもそも名言が好きなのだろう。巷には名言集の類がたくさん出ている。
世の理を、真理を、簡潔にまとめられた名言を読むと、何か世界を知った気になれるからだろう。
だが、それほど人生は甘くはない。
甘くはないからやhり名言に頼る。
そういうことなんだろう。


「ポケットに名言を」、なんとも洒落たタイトルだ。
そんなふうに言葉とつきあえたら、人生は少し豊かになれるはずである。

ポケットに名言を (角川文庫)

ポケットに名言を (角川文庫)