記憶に溶ける〜上林暁文学のこと〜

上林暁 著 「極楽寺門前」 を読んだ。


谷中銀座を抜けて、夕焼けだんだんを登ったところにあるビルの2階。
そこに私の大好きな古本屋がある。
何処行くあても無い休日は決まってそこに行く。


こだわりの品揃えで、文芸書はもちろん、美術関係の書籍が充実していて、私にとっては最高の本屋だ。
そこはお勧めの新しい本も置いてあり、以前読んだ「星を撒いた町」もここで買って読んだ。


そして先日買ったのが同じ上林暁のこの作品だ。今回は古本。昭和51年の作品。
本当に何てことない内容だ。
小説も入っているが、回顧録のようなものが多い。
静かに、本当に静かにページをめくることになる。


そして私の記憶の領域にすっと入ってくるような。
あるいは、私が著者の記憶の断片に迷い込んでしまうような。
そんな不思議な感覚に陥るのが、この上林暁文学の特徴ではないだろうか。


それにしても装丁が素晴らしい。
落ち着いた色調に、なんともいえず愛嬌のあるデザイン。
本のもつ存在感って、やっぱりいいなと久しぶりに思えた。


本棚にちゃんといるのを見ては、少しにやにやしてしまいそうだ。
背表紙はこんな感じ


極楽寺門前 (1976年)

極楽寺門前 (1976年)