世界は変わる〜詩のこころのこと〜
茨木のり子 著 「詩のこころを読む」 を読んだ。
詩人である茨木のり子が感銘を受けた作品を集めたもの。
岩波ジュニア新書ではあるが、完全に大人向けな気がする。
章立てが
1.生まれて 2.恋唄 3.生きるじたばた 4.峠 5.別れ
となっている。
いい詩にはひとの心を解き放ってくれる力があります。
序文で彼女はそう言っている。
納められている作品を読めば納得の言葉。
吉野弘の「生命は」の一節
世界は多分
他者の総和
たった2行で世界が見えてくるようだ。
何が悲しいって、この吉野弘の詩集を持っているのにもかかわらず、このことに気付かなかったふがいなさ。。。
岸田衿子の「小学校の椅子」、これも素晴らしかった。
ながいながい一生のあいだに
みじかいみじかい一瞬に
だれでもいちどは
ここへ戻ってくる
みんながいなくなった教室
さわるとつめたい 木の椅子に
挙げていったらきりがない。詩の入門書としては最高ではないだろうか。
茨木のり子さんの解説も押しつけがましくなく、本当に好きなんだなということが伝わってくる優しい文章だ。
私が詩を読むきっかけとなったのは、三好達治の「詩を読む人のために」という本だった。
これも詩人である三好達治が様々な日本の詩人の作品を選んだもので、
この中の堀口大学の「夕ぐれの時はよい時」という作品を知ったことが始まりである。
この詩を知る前とあとでは、夕ぐれという時間の価値がまるで変った。
詩は言葉で簡単に世界を変えてしまうのである。
とにもかくにも、こういった入門書をきっかけに、是非とも詩の世界に触れてほしいと思っている。
詩についてはこの場でしか話すことはないだろうが、
言葉が意味を与え、意味をもって世界が変わるという体験を知ることは人生を豊かにしてくること。
そういうセンチメンタルなことをもっとしたっていいじゃない、そう思うわけである。
- 作者: 茨木のり子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/10/22
- メディア: 新書
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- 作者: 三好達治
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