時間を写せ〜杉本博司のこと〜

杉本博司 ハダカから被服へ」 を観た。


原美術館で始まった企画展。
世界的評価の高い写真家である杉本博司の作品の中から、服をテーマに展示されている。
原始時代から現代、現代の中でもファッションという概念の流れ、つまり服というものを介して時間をとらえていこうというものだ。


代表作のひとつジオラマは、アメリカ自然博物館のジオラマを綿密な計算の上で撮影し、あたかも現実のようにみせている。
ジオラマという虚構という真実を写し、現実の本質を問いかけている。
今回はそこに被服というテーマが絡み合う。


今回のメインとなるのは「スタイアライズド スカルプチャー」というシリーズ。
ファッション史を辿るように様々なブランドの洋服を撮影しているのだが、言葉でいうほど単純なものではない。
洋服が作られた時代のマネキンをグレーに着色し、服を着せてモノクロで撮影されている。


色は排除され、その造形のみが際立つ。洋服を彫刻としてとらえているというわけだ。
コンセプチュアル・アートの作家としての技が光る。
作品ごとに作者自身によるキャプチャーがあり、それが作品の理解を深めてくれる。


原美術館の企画展はハズレが無い。
毎回書いてるがこの美術館自体のもつ空間自体が素晴らしい。
私にとっては東京で一番好きな場所かもしれない。


この企画展は7月までと長い。
現実を映す写真を使って、目に見えない時間をとらえる。
深い。実に深い。


まぁ、難しいことは気にせず、ふらりと行ってみてほしい。
きっと充実した時間が過ごせるはずだ。