もはや戦い〜谷川俊太郎詩集のこと〜

谷川俊太郎 著 「谷川俊太郎詩選集 3」 を読んだ。


中国人詩人で谷川俊太郎の研究者の田 原氏が選んだアンソロジー
これが最終巻。巻末にはインタビューが掲載されている。


初期の詩からみると、より個人の経験が反映されているような気がする。
具体的には老いや離婚、親の死といったものが影響していると、作者自身も書いている。
しかし、その作詩の姿勢というか、世界を見るまなざしは変わっていない。
自己と世界とその関係を掘り下げようとする気概は、実にストイックな厳しいものを感じる。


谷川俊太郎の詩の言葉はとても平易だ。
その言葉と言葉が結びついて、新たな意味や価値を生み出していく。
現代詩というと、やはりおセンチな、あるいはひ弱なイメージをもつ人が多いが、
そんなことはない。
その生へのもがきや葛藤に、言葉で立ち向かうわけだから、それはもう戦いのようなものなのだ。


その戦いの結果生まれた詩によって、救われる人もいる。
90年「魂のいちばんおいしいところ」の「やわらかいいのち」という詩。
なんだか救わるような気持ちになった。


御存じかもしれないが、私はやさぐれた人間だ。
パワースポットで自分磨きという人をあざ笑うし、
カフェで読書という人を疑う。
ライフハックがどうした、マネタイズはこうだ、かーうるさい!って。
でも、人の作った詩を笑うような人間にはなりたくない。


谷川俊太郎詩選集、何度でも楽しめる。一家に一冊、お勧めである。

谷川俊太郎詩選集 3 (集英社文庫)

谷川俊太郎詩選集 3 (集英社文庫)