都会の距離感〜「パークライフ」のこと〜

吉田修一 著 「パークライフ」 を読んだ。


「悪人」などでお馴染みの著者の芥川賞受賞作品。
新しさを求められる芥川賞はいろんな意味で濃いものが多い。
そういった意味において、この作品は薄い。薄いというか淡い。


日比谷公園を舞台に主人公と偶然知り合うことになった女との交流が筋なのだが、
これという事件が起きるわけではないし、恋愛劇が広がるわけでもない。
都会的な人間の交差を描いている。


東京に住んでいれば一日に数えきれない人々とすれ違う。
いちいち顔を覚えていないし、言葉を交わすわけでもない。
でもみな一様に人生があり、未来に何かを期待しながら生きている。


当たり前のことだが、忘れがちなことだ。
そして都会的な人と人との距離感というのは、そういうことを忘れられる長さなのだと思う。
でもふとした瞬間、その距離が縮んでしまうこともある。
そういう微妙なお話だ。


正直、微妙すぎて?となる作品だが、あとからジリジリくる感じ。
短い作品なので、それこそ暖かくなってから公園で読んでみたらいいかもしれない。

パーク・ライフ (文春文庫)

パーク・ライフ (文春文庫)