写真表現が広がり〜「日本の新進作家展vol.10」のこと〜

日本の新進作家展vol.10 写真の飛躍」 を観た。


写真美術館で開催中の企画展。
現在注目を集める作家5名の作品が紹介されている。
単純に被写体と向き合うものではなく、コラージュや多重露光といった表現方法が駆使されており、
それによって今までにないような表現となっていて、サブタイトル通りの飛躍を感じさせる。


特に北野謙さんの作品は素晴らしかった。
あるひとつのテーマのもとに写した何人ものポートレートを重ねて焼き付け、イメージとしての人物を生み出したものだ。
たとえば台湾のコミケに集まった人34人や原爆慰霊の灯篭を流す人39人など、
暗い背景の中にぼわっと浮かび上がる人物は、その場にいる人たちすべての存在が形になっているような迫力があった。


西野壮平さんの作品も面白い。
例えば東京の地図上の場所をいろんな角度から撮影し、それを実際の地図どおいにコラージュして一枚の立体地図のようにするのだ。
実際の地図とは微妙に違うのだが、その町のもつ特色が非常によく現れていて、観ていて飽きない。
ありそうでなかった発想だ。


ただ撮るだけでなく、撮影したものをどう見せるか。写真表現は誰にでも開かれたものだが、その道は深いのである。


一方で3階ギャラリーの「ストリート・ライフ ヨーロッパを見つめた7人の写真家たち」は記録として興味深い所蔵展になっていた。
1900年前後のヨーロッパの街は市井の人々を撮影した作品が紹介されているのだが、まさに映画のような世界が広がっている。
確かにそういう時代があったんだというリアリティを感じることは思っているより重要なことだと思う。


これはもう見てもらうしかない。
特に新進作家の方は見て損はない。
写美に行くと無性に写真が撮りたくなる単純な私。
今年は一眼をもっと使おうと思う。