時代も人も熱い〜近代美術のこと〜

「イケムラレイコ うつりゆくもの」と「所蔵作品展 近代日本の美術」 を見た。


私の美術鑑賞歴もかなり長くなってきたが、東京国立近代美術館に足を踏み入れるのは実は初めてである。
日本の浮世絵や現代美術は見ることはあっても、近代となるとちょっと二の足を踏む。


印象派以降の西洋画の影響を受け過ぎだろうっていうような絵が多い印象があり、
本物を見られる機会が多い中で日本の近代絵画をあらためて見ようという気にはなれなかったわけである。
が、ここにきて勉強のつもりで見に行く気になったのである。


企画展のイケムラレイコはドイツなどで活躍するアーティストで日本での本格的な古典は初となる。
個人的に好きなタイプではなかったが、”うみのけしき”という連作の”みずうみ”という作品は素晴らしかった。
淡いグラデーションで水や光を表現していたのだが、その色の綺麗なこと。そしてグラデーションの曖昧な境界線に見入ってしまった。


そして、所蔵品展。こちらが私としてはメイン。
教科書で見たことあるような作品も多い。1万点の中からの200点。
これがとにかく面白かった。
20世紀初頭からの流れで展示してあるのだが、作品の前からなかなか動けなくなるようなものばかり。
特に日本画
富岡鉄斎の「妙義山・瀞八丁(どろはっちょう)図」の迫力。
原田直次郎の「騎龍観音」の奇抜さ。
川端龍子の「草炎」の豪華さ。


だいたい私は文学でも近代が好きなのだから、美術も近代が嫌いなわけないのである。
青臭いほどに熱く、品があるような無いような、
生命感あふれる時代に自分を表現しようとしていた芸術家たちが嫌いなわけないのである。


勉強不足としか言いようがない。
日本の現代アートも熱いが、近代美術も熱かった。
美術館自体、とても広いのでゆったりと鑑賞できるのがとにかく気に入った。
お客も少ないし、来ているお客も勉強熱心な雰囲気があり落ち着いている。


皇居を散歩がてら寄ってみてもいいかもしれない。
身近で知られざる日本の美意識に触れられること請け合いだ。