焦りすぎ〜「万寿子さんの庭」のこと〜

黒野伸一 著 「万寿子さんの庭」 を読んだ。


斜視にコンプレックスを持つ二十歳の京子は、社会人になり一人暮らしを始める。
引っ越し先で近所に住む万寿子さんという変わった老人と出会うことになる。
京子に面と向かって「ブス」と罵るような万寿子さんとどういうわけか次第に親しくなっていく。
歳の離れた二人には友情に近い絆が生まれるが、気丈な万寿子さんに認知症の症状が見えてくる。
そのとき京子は。。。


歳の離れた二人の女を対照的に描きながらストーリーは展開していく。
京子と万寿子がそれぞれに抱える過去という決して消えない影をもちながら生きていく姿が良い。
かなりできすぎ感のある内容ではあるのだが、こういう関係性があってほしい、そんな気持ちになった。


驚くのはこの小説を男が書いているということだ。
二人の心理描写は女性作家的な部分が多く、なかなか男には書けない気がする。
読後感の良い結末だし、老いというものを考えるひとつのきっかけになる作品である。

万寿子さんの庭〔文庫〕 (小学館文庫)

万寿子さんの庭〔文庫〕 (小学館文庫)