過去の重さ〜過去との付き合い方のこと〜

乃南アサ 著 「いつか陽のあたる場所で」 を読んだ。

芭子(29)と綾香(41)は台東区谷中でつつましく暮らしている。
歳の離れた二人の女の友情は、塀の中で生まれた。
二人は服役していた過去があるのだ。
男に貢ぐ金をつくるために、そして激しいDVから逃れるために罪を犯していたのだ。


務めを果たし、今度こそしっかりと生きようと二人は下町で暮らし始める。
過去を知られないように、そして過去から決別するために。


重いテーマだが、ほのぼのとした雰囲気で物語は進んでいく。
必死になったり、迷ったり、立ち止まったり。
タイトル通り、いつか陽のあたる場所で堂々と生きるために進む二人を描いたものだ。


手錠がかけられることはなくても、誰かをひどく傷つけてしまったことがある人は多いだろう。
私もそうだ。人に言えないようなこともある。
その罪の意識は決して消えないし、後悔しても遅い。
だが、過去に縛られていては進めない。


過去との付き合い方は難しい。過去の延長線上に今があり、未来があるわけで、そこだけ別にするわけにはいかない。
結局、過去を背負って前に行くしかない。
当たり前のことだ。
だが、時々そのことを忘れてしまうことがある。


この小説を読んで、過去というものの価値と重さを感じた。
とても読みやすい作品だ。若干、劇場的すぎるきらいもあるが、著者独特の人間描写が面白かった。

いつか陽のあたる場所で (新潮文庫)

いつか陽のあたる場所で (新潮文庫)