狂気の距離〜「告白」のこと〜

湊かなえ 著 「告白」 を読んだ。

本屋大賞を受賞し、松たか子主演で映画化され話題となった作品。
映画もとてもよくできているらしく、良い評判を聞く。
ただこのストーリー自体には賛否両論があるようだ。


わが子を校内で殺された女性教師が生徒たちに衝撃の告白を始める。
静かなるサイコサスペンスのようでもあるのだが、
この作品が描く狂気は特別なものではない。


復讐や自己顕示欲といった誰でも抱く感情に基づく狂気なのである。
だから、怖いのだ。
その狂気があまりにも近くにあることに気付くから。


たぶん後味悪いという読者がほとんどだと思う。
それは正常な感想だと思うし、それこそが作者の意図するところなのではないだろうか。
先にも書いた”狂気の近さ”、その距離に対する恐怖が重要なのである。


登場人物の感情表現は少なく、たんたんと語っている。
そのことに対して人間を描いていないという人もいるかもしれないが、
これを読んでいる人の心は穏やかではいられない。
自分の中に登場人物の誰かと通ずる部分を見つけてしまうから。


ざわざわ。読んだあとも、ざわざわ。
読んだ人にどうだった? と聞きたいが、聞かれても答えたくない。
そういう作品。

告白

告白