大門に思いを馳せて〜吉原のこと〜

松井今朝子 著 「吉原手引草」 を読んだ。


直木賞受賞作、私は吉原モノが好きなのでずっと読みたかった本なのだ。


葛城という吉原一と言われた花魁が突如消える事件が起きる。
その事件について、関係した様々な立場の人物に聞き取りしていくのだが、
それぞれが一人語りする中で、吉原のしくみ、しきたりをさりげなく説明していく。
読み終えたとき、この事件の真相が解明されると共に、
吉原という閉ざされた世界についての知識が身についているというわけだ。


とてもよくできた作品で、タイトル通り、吉原のガイドブックだ。
以前にもいろいろと吉原モノを読んできたが、入門書としては最高だろう。
ちなみに私が最高傑作だと思うのは宮木あや子の「花宵道中」という作品だ。


私は吉原に住んだ経験もあるくらいだが、現在のあの町には当時の面影はない。
が、探してみるとゆかりの場所はいくつかある。見返り柳、死んだ遊女を投げ込んだ浄閑寺関東大震災で亡くなった人を供養した吉原観音。。
また後期の吉原の写真は結構残っていて、当時の豪華絢爛な様子を想像するのも楽しい。
あるいは錦絵や落語にも残る名妓・高尾に思いをはせるのも良い。
昭和初期まで続いた赤線という文化もここで花開いたのだが、その話はいつかまたすることもあるだろう。


現代の男をも魅了する吉原文化。世界広しといえど、政府公認の売春システムとしてここまで確立されたものはないだろう。
しかしまぁ、今も当時の吉原が残っていたとしても、私程度の男では遊ぶ金もなければ、気概も無い。。。
話が逸れまくったが、仁の影響で吉原に興味を持った人は是非手に取ってもらいたい作品である。


吉原手引草

吉原手引草