ホッテントット〜民族と価値観のこと〜

21世紀研究会 編 「民族の世界地図」 を読んだ。


単一民族国家といえる島国、日本。
ほとんどが同じ肉体的特徴をもち、同じような価値観をもって生活している。
そんな私たちが民族という概念を理解するのは難しい。ましてや宗教、あるいは民族紛争をである。


この本は民族の定義からはじまり、人種、宗教、紛争、さらに文化に至るまで簡潔に説明している。
現在の世界情勢を理解するのには最良の本だと思う。
これ一冊でかなりの知識を得ることができた。


とくに世界各地で起こっている民族紛争は、なかなか把握できないので興味深かった。
領地や宗教、民族、戦争の原因の背後には欧米列強の介入が必ずある。
植民地や資源を得るため、特にアメリカとイギリス、ロシアが進出しては問題を残して去っていく。


この世界にはいろんな人種がいて、それぞれが違うものを信じ、違う価値観をもっている。
何が正しくて、何が悪いか、それは簡単には決められないのだ。
私たちは世界の広さを知らなくてはいけないのだ。


あまり本筋とは関係ないが、驚いたことがあった。
私の母は幼少のころより「ホッテントット」という言葉をよく使う。
訳の分からないことすると、、「お前はホッテントットか!」
面白い顔の人見ると、、、「ホッテントットみたいな顔してる」
で、ホッテントットって何? と聞くと、、、「知らない」


このホッテントットの謎は深まるばかり。言ってる本人が知らないのだ。
で、その謎がこの本で解き明かされたのである。
ホッテントットとは、いわゆるアフリカのブッシュマンの近隣牧畜民族コイコイの昔の呼び名だったのだ。
植民地化された歴史を考えると蔑称に近いかもしれない。
母が幼いときに聞いたその不思議な言葉の音だけが残り、意味は忘れてしまったのだと思う。
差別用語ともいえるので、ホッテントットは封印した方がよさそうだ。


民族の世界地図 (文春新書)

民族の世界地図 (文春新書)