動物愛のかたち〜「解剖男」のこと〜

遠藤秀紀 著 「解剖男」 を読んだ。


タイトルだけ聞くと、ハサミ男的な猟奇ミステリーかと思うだろうが、これは違う。
動物の生態や進化の謎を解くために、解剖に情熱をかける著者の熱い叫びだ。


科学者の本とは思えないほどに熱い。解剖がいかに困難か、いかに有意義かを語っている。
確かに動物の解剖というとネズミなんかの実験解剖が頭に浮かぶが、
たとえば何百キロという重さのサイや、身長何メートルのキリン。
これらを動物園で死亡が確認されてから、運搬し解剖するわけである。


考えてみれば、これは確かに大仕事だ。
そもそも日本でそれほど多く死体が出るわけもないので、大変貴重なものというわけだ。


骨や筋肉からその動物の系統や進化の歴史を読み解くのはまさにミステリー。
その楽しさが文章から伝わってくる。


これはひとつの動物愛のかたちだと思う。
動物が好きだからこそ、その死体にメスを入れるのだろう。
読めば、動物を見る目が少し変わる一冊である。

解剖男 (講談社現代新書)

解剖男 (講談社現代新書)