普通の生活の価値〜若者ホームレスのこと〜

飯島裕子、ビックイシュー基金 著 「ルポ 若者ホームレス」 を読んだ。


ネットカフェ難民という言葉が話題になったのも記憶に新しいが、
今、20代、30代のホームレスが増えている。
その現状を綿密なリサーチをしてまとめたものだ。


なぜ路上生活を余儀なくされることになったのか、家族はどうしているのか、
セーフティーネットはどうなっているのか、なぜその現状から抜け出せないのか。
現代日本の社会構造から切り込んでいる。
あっけないくらいに転落する人生の有様にぞっとする。


若いんだからどうにでもなるだろう、私なんかは正直そう思っていた。
が、実状は違うようだ。底なし沼のように、そこには不幸の連鎖反応が垣間見える。
ひとつの大きな要因となったのが、派遣社員制度。この不安定な雇用体制が結果としてホームレスを増やしたようだ。


彼らは決して怠け者なのではない。
少し不器用なだけなのである。人間関係がうまく築けずに、いじめなどに会いトラウマがある人が多いのだ。
その背景には不幸な生い立ちがある。
強すぎる自責の念と集団生活の忌避は若いホームレスの特徴でもある。


一度路上に出ると、そこから抜け出す困難さもよく分かった。
家族がいて、住むところがあって、仕事がある。その当たり前のことが奇跡のように思えてくる。
震災によってこうした状況に置かれる人は増えてしまうだろう。
自分自身、いつそうなるかわからない。


何よりも私たちは今ある絆を大切にする必要がある。
日本の社会構造を浮き彫りにし、生きることの難しさと素晴らしさを再認識できる作品。
ルポとしての完成度がとても高い良書だ。
一読の価値あり、である。

ルポ 若者ホームレス (ちくま新書)

ルポ 若者ホームレス (ちくま新書)