完成されたファンタジー〜「新世界より下」のこと〜

貴志祐介 著 「新世界より 下」 を読んだ。


上巻では子供時代の主人公たちの冒険を通じて、この作品の世界観を理解できたわけだが、
下巻では大人になった主人公たちの戦いが始まる。
この戦いが実に壮絶なことになっている。
SF小説というと子供も読みやすい感じがあるが、この作品はあまり読ませられない。
それくらい壮絶なのである。


呪力をもった人間にバケネズミと言われる醜い奴隷のような生き物が反乱を起こすのだが、
種の差別による憎悪が執拗に描かれる。
それは現実の世界における人種差別などにも通じるものだ。


それにしても上下巻で1000ページくらいだが、よくぞこれで収まったというほどスケールが大きい。
それでいて設定が細かく、面白い。
本当によくできた小説だと思う。
そしてこれは小説の可能性を示した良い例ではないだろうか。

マンガやアニメじゃなく、小説という形でしか見せられないイメージというものが確かにあるのだ。
読む人それぞれに作られる作品世界。
想像の楽しさがそこにある。


最後までたっぷりと楽しめた。お勧めである。

新世界より (下)

新世界より (下)