写実と実存〜ホキ美術館のこと〜

ホキ美術館に行って来た。


昨年11月にオープンしたばかりの、日本で初めての写実絵画専門の美術館である。
千葉の内陸、土気という場所にある。高速使って美術館に行くことになるとは。


写実絵画は簡単に言えばリアリズムの極み。まるで写真のように超絶技巧で描いたものだ。
これが本当にすごいことになっている。
人肌にうっすら浮かぶ血管、髪の毛の束、グラスの透明感、果実の新鮮さ、
その質感が手に取るように感じることができる作品が並ぶ。


絵画に対して知識が無くても、単純にすごいと思える。子供も楽しめるだろう。
恐ろしく辺鄙な場所にあるにも関わらず、結構な賑わいだった。


ただ芸術として考えると、見方が難しい。
とにかくすごいとため息を漏らし、どうやって描いているのかとそればかり気になるからだ。
表現方法としての写実、というのは恐らく「見る」という行為そのものに意識を向けるものだ。


ある瞬間の空間を見る。とにかく見る。細部に至るまで見る。
そこに在るものを認識する。
それは最終的に実存を意識することに他ならない。


対象物そのままであれば写真で良い。
それを描くということは、世界をより在る状態にもっていくということではないだろうか。
そんなことを考えながら見ていると、逆に現実感が希薄になっていくように感じた。


とにかく絵に興味がなくても一度は訪れてほしい美術館だ。
どんな形であれ、絶対に感動するはずである。