余韻の美学〜夜消えるのこと〜

藤沢周平 著 「夜消える」 を読んだ。


市井の人々の悲哀を、藤沢節の効いたのんびりとした文章で綴った七編の短編集。


劇的なストーリー展開はないのだが、先に書いた悲哀というものをじんわり感じる。
暮れていく一日のような、どうしようもなさを自然に描いているのがすごい。


江戸の人々の息づかいが聞こえてくるような、藤沢文学の秘密はなんだろう。
とにかく自然なのだ。時代小説を読んでいる気がしない。
当たり前のように話しが始まり、微かな余韻を残して終わっていく。


説明はできないが、これが大人の読む小説、ではないだろうか。

夜消える (文春文庫)

夜消える (文春文庫)