見えるということ〜闇の中のこと〜

乙一 著 「暗いところで待ち合わせ」 を読んだ。


ミチルは全盲でありながら一人で暮らしていた。
その家に警察に追われるアキヒロが身を隠すようになる。
ミチルは少しずつ他人の気配を感じるようになるが、危害を加える様子はない。
異様な同居生活が始まる。。。


無理はあるが、なかなか面白い設定のミステリーだ。
かなり出来すぎ感はあるのだが、それなりに楽しめる。
映画化もされているようだが、全く知らなかった。


全盲というと、以前参加したダイアログ・イン・ザ・ダークというワークショップを思い出す。
80分、その場で逢った8人と完全なる暗闇の中でいろんな体験をするというものだった。
そのガイドをしてくれるのが全盲の方だったのである。


暗闇の中で圧倒的な不安を感じている私たちとは対照的に、
全盲のガイドはまるで見えているかのように私たちを導く。
闇の中で迷子になると、そっとそばに来てくれるのだ。
闇の中でグラスにビールを注ぎ、闇の中でグラスを洗う。
その研ぎ澄まされた神経。


この作品でも見えないということの恐怖と孤独を描いているが、
実際は考えられないほどのものだ。
閉ざされた闇であり、終われば光の下に戻れる前提だからこそ私も楽しめたが、
一生闇の中となれば、その闇を克服できるか全く自信がない。


話しが逸れてしまった。
この作品で”見える”ということの素晴らしさはわからないだろうが、
闇の怖さは少しわかるかもしれない。

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)