冒険活劇〜八犬伝のこと〜

山田風太郎 著 「八犬伝 上」 を読んだ。


言わずと知れた、滝沢馬琴が長い時間をかけて作り上げた長編伝奇文学の古典だ。
だが、実際に内容を知っている人は少ないのではないだろうか。
以前から興味があったのだが、なかなか機会がなく、
山田風太郎版の八犬伝が一番読みやすいということで手に取ったのである。


ざっくり言うと、
呪いのせいで、伏姫は犬に嫁ぐことになる。
姫は交わりのないまま懐妊してしまう。
呪いは浄化されているので、犬の子を産むわけではないと証明するため、
姫は腹を切るのだ。
そこから飛び出したのが、
仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌
という字が浮かんだ玉。
その玉の宿命を背負った男達、八人。つまり八犬士が運命的に集まっていくのである。


まさに冒険活劇。
これがすこぶる面白い。
冒頭部分から引き込まれた。


上巻でも全員揃わないのだが、
それぞれの犬士の運命に翻弄され錯綜する様がよくできているのだ。
なにせ登場人物が多いので混乱するが、勢いで読んでしまう。


山田風太郎版の面白いところは、虚の世界と実の世界が交互に描かれる章立てなのだ。
虚の世界は八犬伝の世界。
実の世界は作者である滝沢馬琴の世界の話し。
馬琴と北斎の掛け合いなのだが、馬琴の人となりが面白い。
虚と実の緩急が巧みなのだ。


八犬士は無事全員集まることができるのか。
馬琴は無事書き終えることができるのか。
下巻へと続く。

八犬伝〈上〉 (朝日文庫)

八犬伝〈上〉 (朝日文庫)