他罰的人間〜私は悪くない症候群のこと〜

香山リカ 著 「悪いのは私じゃない症候群」 を読んだ。


香山リカの本は時代を上手く切り取っていて、
社会を見る視点がとても参考になる。


この作品はタイトルの通りである。
新型うつ、モンスターペアレントアダルト・チルドレン、スピリチュアル……。
様々な社会現象の背後には、私は悪く無い!という強い意識がある。


会社のせい、上司のせい、親のせい、環境のせい、時代のせい、前世のせい。
私は悪くない。悪いのはあいつだ
成果主義の社会で、人は非難されるのを極端に嫌うようになり、
非難される前にこちらから非難しようとする。自責はなく、他罰があるのみ。


そういった他罰的な人が増えてきている現状に様々な例を挙げて警鐘を鳴らしている。


著者は「自己責任」という概念が他罰的な人を生んでいる一因だと言っている。
私もそうだが、確かに窮地に立たされた人に対して、自己責任だと簡単に割り切り、
非難してしまうことがある。


自業自得と言われる場合と、自己責任を問われる場合。
両者は似ているようで違うのだ。


誰かのせいにするのは簡単だ。非難するのも簡単。
だがそうする前に状況をよく見て熟考する余地があるはずなのだ。
そして、何より支え合おいうという精神を忘れていやしないか。


この本を読んでみて、強さと優しさの本質を考えさせられた気がする。
大袈裟なようだが、そんな人の根深いところまで影響する社会病理なのだ。
組織に身を置く人には是非読んでみてほしい一冊だ。

悪いのは私じゃない症候群 (ベスト新書)

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