あの頃の気持ち〜カラフルのこと〜

森 絵都 著 「カラフル」 を読んだ。

現在、アニメ映画が公開中の原作。著者は直木賞作家で児童文学を得意としている。気になったので読んでみた。


罪を犯して死んだ「ぼく」の魂は、天使によって再び下界に降りるチャンスをもらう。
下界で自殺で死ぬはずの少年の体に入っている間に、前世で犯した罪を思い出すという試練に挑む。
小林真という14歳の少年として生活を始め、彼が抱えていた問題を目の当たりにすることになる。
しかし、やがて現実を生きるということの意味に希望を見出していき、
自分が犯した罪に気づく。

ストーリーは淡々と進む。つらい現実の情景も当たり前のように主人公に降りかかる。
だが見ようとしなければ見えない色があることに彼は気づくのである。。


薄い内容かと思いきやとんでもない。面白く、そして若い人たちへの啓示に富んだ作品だった。
セリフがとても生きている感じがして、まるで脚本を読んでいるように世界が見えた。
カラフルというタイトルも効いている。
それは世の中にはいろんな色の人がいて、自分の中にも明るい色、暗い色があるというメッセージだ。


14歳、自我に目覚め、コンプレックスを抱え、社会の不条理に気づく頃だ。
そこで死を選ぶ子が少なくないことも現実としてある。


若い頃、自殺したいという人をどう言って止められるかと考えていた頃があった。
その人が抱えているものを、自分は理解することはできないわけで、ただ死ぬなと言えるかのか、と。
なぜ生きなきゃいけないの? と言われたら、私は答えられないと思った。いや、今も答える自信はない。


もし今、若い人がそんなふうに悩んでいたら、この本を渡してみるかもしれない。
答えは無いが、ヒントはたくさんある気がする。
大人でも何か忘れていたものをこの小説の中に見出せると思う。


カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)