和エロ〜あやめの衣のこと〜

最乗寺をあとにして、小田原方面に向かっていると箱根の標識を発見。
これは二度とないチャンスだ。そう、ポーラ美術館に行くチャンスである。
彫刻の森美術館は誰でも楽しめるが、ここは絵が好きでないと楽しめない場所なのだ。
箱根の渋滞をすり抜け、山道をひた走った。


ポーラ美術館は山の景観を崩さないように窪地に建てられているので、地下へと伸びている。
西洋画は印象派以降の作品を美術史を追うように展示してあり、あなどれないコレクションだ。
だが、この美術館は日本の近代絵画が熱い。
私が来た目的もそう、岡田三郎助の傑作「あやめの衣」を観ることだ。


明治から昭和にかけて活躍し、着物の収集でも知られる画家で、油絵で日本美を描くことを得意としていた。
少し前に美の巨人でもこの作品が紹介されていたのだが、
落ち着いた青の友禅を肩に滑らせ、白い肌を見せた女性の後ろ姿。
そのエロチシズムたるやない。
清潔にして妖艶、日本男児として見過ごせない。
西洋にこの感じを求めるとアングルの「泉」が近い気もする。
うっとりと時間をかけて鑑賞できた。


他にもアール・ヌーボーのガラス作家、ガレの作品も多く展示してあって楽しめた。
大満足で美術館を出たあとは、せっかくの箱根である。温泉にもしっかり入った。
天下の険を見渡せる湯で疲れを癒し、再び猛烈な太陽の下、東京までバイクを走らせたわけである。