歴史はどこにでもある〜侍はこわいのこと〜

司馬遼太郎 著 「侍はこわい」 を読んだ。


司馬遼太郎の作品は歴史にその名を残した英雄たちを、緻密な文章で描くイメージがあった。
だがこの作品は市井の中で異彩を放った人々を描いた短編集になっている。


江戸や幕末に実際にいたとされる人たちにスポットを当てているのだが、
どれも実に面白いエピソードなのだ。


中でも庄兵衛稲荷」という作品は秀逸だ。
大阪の町に生きた気儘人(きままじん)と自称する猿霞堂庄兵衛という人の話。
何するわけでもないのに金には困らず、世に通じ、そして好色。
その気儘人がさる若い後家に惚れてしまい、落としたいために獅子奮迅働く話。


落語のようなナンセンスな内容で、最終的にその登場人物が愛しくなる。
司馬遼太郎もこういう作品を書くのかと驚いた。
誤解をしていたのかもしれない。


長編歴史小説のイメージが強い司馬文学に抵抗がある人には是非お勧めしたい。
これはこれで歴史に触れる楽しさを知ることができるはずだ。

侍はこわい 時代小説 短編集 (光文社文庫)

侍はこわい 時代小説 短編集 (光文社文庫)