もはや別宅〜バーのこと〜

浅草の場末にある私の馴染みのバーだが、もうしばらくするとガールズバーに変わってしまう。
こんなに悲しいことはない。最高にくつろげる場であり、何でも話せる場所だったのに。
内装も変わるので今のうちにと写真を撮ってきたのだ。
私の話し方だと安そうなバーに思っているかもしれないが、グレードは低くない。


一枚板のカウンターがあり、手前の奥にテーブル席がある。
バックバーは鏡が貼ってあり、鏡越しに他の客と目が合うことがある。
ちなみにスツールはカッシーナであることは、他の客もあまり知らない。



まずはビールだ。
注ぎ方も丁寧で泡の分量もぴっちり決められている。
きめ細かい泡に閉じこめられた琥珀色のビールの味は格別だ。


続いては白ワイン。このバーはワインがメイン。
ふざけたバーテンではあるがソムリエでもあるのだ。
グラスワインでも十分に美味しいものを出してくれる。


三杯目はフレンチコネクション。
他の店でも頼むがここのが一番美味しい。おそらく良いブランデーを使うからだろう。
甘さのあとに少し舌がしびれるような味わいが広がる。

だいたいいつもこのコースを2時間くらいかけて飲んでいる。
このカウンターでいろんな出会いがあった。
いろいろ勉強させてもらったし、とにかく笑った。


この至福の時間を楽しめるのもあとわずか。
でも思い出にするにはまだ早い。
悲しい気持ちも美味しいお酒の前では良い肴になったりするものである。
近いうちにまたここの扉を開けて、ニヤけ顔のいらっしゃいませを聞くとしよう。