裏返せ俺を〜言葉の可能性のこと〜

谷川俊太郎 著 「谷川俊太郎詩選集1」を読んだ。

よくぞその顔でと思うかもしれないが、私は詩も読んだりもする。
今回は谷川俊太郎
今なお現役で頑張る日本人なら知らない人はいないだろう。
子供から親しめる詩をいくつも残していて、生きていればどこかで谷川俊太郎の作品に出会うはずだ。

この詩選集1は50〜70年代の初期の作品が集められている。有名な「生きる」も入っていた。
私が一番好きになったのは1960年の「あなたに」の中の「頼み」という詩である。
出だしの部分を抜粋してみよう。

裏返せ 俺を
俺の中の畠を耕せ
俺の中の井戸を干せ
裏返せ 俺を
俺の中身を洗ってみな
素敵な真珠が見つかるだろう

”裏返せ”という表現。すこーんとイメージが入ってきた。
これである。
これが詩というか、言葉の凄さなのだ。
この詩は続いていくにしたがって、もっと切実になってくる。
このヒリヒリした感じ。

知っているはずの言葉の新しい一面を見せてくれるのが詩である。
それによって見える世界は確実に変わる。比喩ではなくて実際変わってしまうのだ。
詩はぎりぎりの表現方法であり、世界に真っ向から対峙する方法でもあるわけだ。
洒落臭いと思う人も多いだろうが、たまにはそんな詩の世界に触れてみてはどうだろうか。

谷川俊太郎詩選集  1 (集英社文庫)

谷川俊太郎詩選集 1 (集英社文庫)