夢に、デルヴォー〜ポール・デルヴォ―のこと〜


ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」 に行って来た。


府中市美術館の企画展。
マグリットと並んでベルギーを代表するシュールレアリズム絵画の代表的な画家。
私のようにマグリットを好きになった人は、このデルヴォーも必ず通るはずだ。
今回は日本初公開の作品も数多く展示されている。


裸婦、神殿、路面電車、このモチーフがとにかくよく出てくる。
とくに裸婦はいつも同じ顔で、目にまったく生気が無い。
まるでオブジェのように配置されている。


路面電車も走ってはいるが、止まっているようにも見える。
音がしない。
この無音こそが私の好む絵画の共通点でもある。


デルヴォーは自分の愛したモノを画面に配置していったわけだが、
その愛情は単純なものではなく、遠くから眺めるような、少し恐怖感すら見えるもので、
だからこそ独特な夢のような画風が生まれていったのではないだろうか。


自分の作風が確立するまで、デルヴォー印象派の様々な画家の筆を真似ては試行錯誤を繰り返した。
その頃の作品がとても面白い。デルヴォーとは思えないものばかりで、天才と思っていた人の努力の跡を見た思いがした。
なにより人間的だと思うのが運命の女性タムの存在だ。


若いころに恋に落ちるも親の反対で別れる、が、20年後に偶然再会し復縁する。
別れたあとも思い焦がれてスケッチを描き、それが彼の描くあの女性の像となっていく。
生涯愛したタムが彼の芸術活動の源。彼女の死とともに、デルヴォーも筆を置く。
一見冷たい彼の作品は良く見れば愛情に溢れているわけだ。


非常に面白い企画展だった。
予想以上に人がいて、彼の人気の高さにも驚いた。
彼の歴史を知れば、より好きになるだろう。
そしてきっと不思議な夢が見れるはず。。。