絶妙な不安感〜梅崎春生とIZのこと〜

梅崎春生 著 「幻化・日の果て」 を読んだ。


地元グループKの奥さんであるIZは、私の数少ない読書仲間だ。
時折メールで情報交換をするのだが、このIZという人は少々変わっている。
私もそうだが、見た目は本を読むようにはまったく見えないのだが、これがかなりの読書家。
しかも、戦争や赤線文化について異常に詳しく、読む本も昭和初期のものを好む。


吉原についてお造詣が深く、すごい笑顔で「読んでみて!」とごっそりと資料を渡された。
そんなIZから最高の戦争文学だ! と熱く勧められたので読んでみた。
しかしよく見つけるものである。私はまったく知らなかった。


そして読んでみて、たしかに良かった。
特に「幻化」はじりじりとした不安感が支配している作品で、私の好きな安部公房と近いものを感じた。
テーマは重が、文章は美しく、そして行間にある間が絶妙だ。
なんと表現したらいいか、砂漠をゆらゆらと歩いているような、それがまったく苦痛でない感じ。


こういう作家は今はもういないような気がする。
機会があれば他の作品も読んでみたい。
ありがとうIZ。さすがである。

桜島・日の果て・幻化 (講談社文芸文庫)

桜島・日の果て・幻化 (講談社文芸文庫)