いつか殴りたい〜Tのこと〜

Tの奥さんが実家に戻っているので飲むことになった。


Tと飲んでも何も書くことがないのでいちいち書かないが、なんだかんだでよく飲んでいる。
いつもの居酒屋のいつもの席でぐだぐだ飲む。
それにしてもよく文句を言う。
そしてよく食べる。


さくっと飲むとか言いながら、2件目に行くことになる。
よく金を使う男である。
私の行きつけのスコッチ専門バーへ。
たいしてウィスキーが好きでもないのに、この男高い酒を飲む。
腹が立つ。
私がこういうの嫌いなの知っていて頼む。


イチローモルトという国産ベンチャーウィスキーがあるのだが、
これが一杯1600円する。普通のバーで飲んだら確実に倍はする銘酒だ。
私がしぶしぶストレートで飲みながら香りや色を楽しんでいる横で、
Tはこれをロックで飲む。
感想は「臭い」
さすがアバター観た感想が「青かった」と言うだけのことはある。
これほど感性の無い人間も珍しい。
じゃもう、下町のナポレオンでも飲んでろと。


もう帰ればいいのに、「キャバ行こう、キャバ」とのたまう。
下町の社長、ここに極まる。
T行きつけの店先で、キャッチの人と交渉を始める。
指名の子がいないらしく、電話してみたり、いろいろと話しだす。


イライラMAXを超える。
そして発動、私の十八番、
いつのまにか黙って帰る。


慣れたもので、これで特に問題も起こらない。
私も自由な人間だが、彼も相当に自由だ。
自由の形はいろいろあるものだとつくづく思う。


こうして長く付き合っていられるのも、相手の自由を仕方なく受け入れているからだろう。
受け入れてはいるが、認めてはいない。
私がこういろいろ考えていても、彼は心のままに自由を謳歌するのだろう。
何か世の理不尽を感じる……。
まあ結局、面白ければいいわけなのだが。