いざ、ごとびき岩〜伊勢・熊野旅行のこと その3〜

伊勢からは特急ワイドビュー南紀5号に乗って、熊野方面に向かう。
3時間弱かかるのだが、のどかな田園風景から、紀伊半島を沿うように走る車窓は広い海の景色が広がり飽きることがない。


宿のある紀伊勝浦の少し手前の新宮という駅で降りる。
ここには絶対見たいと思っている巨岩・ごとびき岩を祀る神倉神社があるのだ。
すでに16時を回り、次の電車には必ず乗らなくてはいけないのでのんびりしていられない。
駅から15分程度らしいのだが、すでに疲れ気味。
しばらく歩くとそれらしいのが見えてきた。

山ですな、山。
いや、ひるんでいる暇はない。気合で行ってやる。

頼朝が寄進したという石段が538段ある。
石段というよりもはや崖だ。急こう配というレベルを超えている。
登りはまだいいのだが、帰りは恐ろしく怖い。
ちなみに、お祭りでは白装束に松明を持った若者がこの石段を駆け下りる。テレビで一度は見たことあるのではないだろうか。


汗だくになり、ひぃひぃ言いながら登りつめた先にあるのが、ごとびき岩。

でかっ! ちょっと待って、やっぱりでかっ!
熊野の神様が降り立った場所とされている。所謂、磐座信仰であり、この岩そのものが御神体になっている。
古事記日本書紀にも名前がある場所であり、さらにそれ以前から信仰の対象になっていたようだ。


私はこういった自然崇拝が好きである。
神様、仏様もいいが、実態としてそこにあり、圧倒的な存在感を放つものに素直に畏怖する態度。
それが人間として本来もっておくべき心構えな気がする。
はるか昔から人々はこの白い岩を見ては恐れと尊敬の念を抱いてきたと思うと、歴史の重さを感じる。


山頂からは遠く熊野灘を望むことができる。
とにかく来られて良かった。感無量。
今回の旅行では2番目に良かった場所だ。
恐る恐る下山して、紀伊勝浦という温泉と漁港の街にある宿へと向かったわけである。