静謐な世界〜死者のための音楽のこと〜

山白朝子 著 「死者のための音楽」 を読んだ。


ジャンルで言うと怪談になるのかもしれないが、
この作品集はいわゆる怪談とは趣が違う。
怪談と童話の間というのが近いだろうか。


静謐とした語り口で物語りが紡ぎ出される、そういった表現が似合う。
淡々としていて、少しだけぞっとして、後に残るのは一抹の悲しさだった。
とにかく静かな短編集なのだ。


はっきりとした音、ではなく、無音という音を聞いている感じ。
遠い国のおとぎ話のようで、すっと自分の過去のように思える感じ。
そういった、表現し難い感覚を覚える作品だ。
こういう作品は良い作品である。そばに置いておきたい作品である。


あえて内容には触れないでおきたい。
興味をもったらページをめくってほしい。
7つの短編が収められているが、どれも私好みだった。
こういう作品があるから、読書はやめられないのである。

山白朝子短篇集 死者のための音楽 (幽ブックス)

山白朝子短篇集 死者のための音楽 (幽ブックス)