痛みの向こう側〜松井冬子のこと〜

松井冬子展 世界中の子と友達になれる」 を見た

横浜美術館で開催中の初となる大規模な個展。


一度見たらなかなか忘れられない彼女の作品は、死や痛み、霊を連想させるものばかりだ。
だがそんな負のモチーフを日本画という繊細な手段によって、その向こう側にあるものを感じさせる耽美な世界を作りだしている。


数年前に初めてみたときは、どんだけのメンヘルアーティストが描いているのやらと思ったものだ。
この画風から察するにきっと辛酸なめ子みたいな人だろうと思っていたものだが、とんでもない。
信じられないくらいの美人である。
美人過ぎる日本画家である。
ちょっとひくレベルである。
この顔でこの絵。ギャップあり過ぎである。


美人〇〇というと、顔が良いから売れているんでしょ的な目でみられることも多いだろうが、
彼女の作品の独自性はそんなことを言わせないほどの力をもっている。
私も彼女の作品に魅了された一人だ。
顔を見てより好きなるのは、これ仕方ない。


今回、作品を作り上げるまでの過程である下絵なども展示されている。
構図や色などを実に細かく考えているメモなどを見られるのは面白い。


内臓なんかが出ちゃってたり、恨めしそうな目でこっち見てたり、
恐ろしいのに美しい。なんともいえない世界感。
とても魅力的だった。


死の甘い香り、その向こう側には生への執着があるのかもしれない。
絶望を描いているようで、強い希望を表現する。
今後の日本の美術界を代表する人物であることは間違いない。
是非ともチェックしてほしい。